国指定有形文化財(重要文化財)

若王寺「木造智証大師坐像」

にゃくおうじ/もくぞうちしょうだいしざぞう
高僧の貴重な模刻像

若王寺「木造智証大師坐像」
若王寺の「智証大師円珍」という僧の姿を表した像が、国の重要文化財に指定されています。

智証大師円珍とは、どんな僧侶だったのでしょうか? 9世紀、比叡山延暦寺で最澄が天台宗を開きました。智証大師円珍は9世紀半ば、天台宗僧侶として唐に留学し、経典約一千巻を持って帰国、発展に貢献しました。その後天台宗は寺門派と山門派に分裂し、対立するようになります。その一派である寺門派をおこしたのも智証大師円珍です。初期天台宗の高僧として尊敬の念を集めています。

智証大師円珍の死後、いくつもその姿を写した彫像が作られました。その根本の像とされるものが三井寺(滋賀県)に二体あります。それらは、古くから秘仏とされてきました。若王寺の智証大師像は、その根本像の一体、「御骨大師」(おこつだいし)像の唯一の模刻像です。制作時期は平安時代後期(12世紀)とみられています。

若王寺のある僧坊地区は以前多くの寺がありました。9世紀に智証大師円珍がこの地で円満院というお寺を開いたと伝えられています。円満院はもうありませんが、智証大師円珍は今もなお、この地で人々を見守っています。

若王寺正面僧坊地区のほぼ中央にある若王寺。

若王寺境内奈良時代に、東大寺の大仏建立に力を尽くした行基が開いたと伝えられる古い寺です。