カイコを育てる道具

種紙(たねがみ)

種紙(たねがみ)
カイコ(蚕)の卵(たまご)のことを蚕種(さんしゅ)とよび、蚕種が産みつけられた台紙を種紙といいます。
種屋(たねや)とよばれる専門の業者が、台紙の28個の枠(わく)それぞれに、メスの蚕蛾(かいこが)を1ぴきずつ置いて卵を産ませました。農家は種屋から種紙を買い、部屋の温度を温かくし、湿度を保って、卵がかえるのを待ちました。
写真は、明治時代から大正時代にかけて柘榴(ざくろ)地区で種屋を営んだ中井房吉が製造した種紙の台紙です(写真の台紙には蚕種はついていません)。中井は京都府内だけでなく、三重県や奈良県へも蚕種を販売していました。
このほか、精華町内では下狛地区の岩井氏や菅井地区の松元氏らも蚕種を製造していました。

個人蔵(柘榴)


桑切包丁(くわきりぼうちょう)

桑切包丁(くわきりぼうちょう)
カイコのエサとなる桑(くわ)の葉を切りきざむための包丁です。カイコの成長に合わせて桑の葉の大きさを変えて切りきざみ、カイコにあたえました。

整理番号:1639 採集地:菅井

相楽郡養蚕業組合の栽桑(さいそう)指導

蚕箔(さんぱく)
蚕箔(さんぱく)
カイコをのせて育てる道具です。
蚕箔の上に蚕座紙(さんざし)という紙を敷(し)いてカイコをのせ、これを部屋のなかにもうけた蚕架(さんか)とよばれる棚(たな)に差しこんで育てました。
写真は、竹を長方形に編んだ厚みのない平らな籠状(かごじょう)のものです。明治時代に山田荘地区で養蚕(ようさん)がはじまったころは、縁(ふち)のついた丸い籠が使われていました(『山田荘村誌』139頁)。

整理番号:213 採集地:下狛舟


給桑台(きゅうそうだい)

給桑台(きゅうそうだい)

給桑台の上に蚕箔をのせた状態

給桑台の上に蚕箔をのせた状態

給桑台(きゅうそうだい)

カイコに桑の葉をあたえるときに、蚕箔を置く折りたたみ式の台です。
蚕架という棚から蚕箔を引き出し、給桑台の上にのせて作業します。桑をあたえるときのほか、カイコのフンや食べかすを掃除(そうじ)するときにも用いました。

整理番号:1636 採集地:菅井

カイコに桑の葉をやる実習の生徒たち


藺網編み機(いあみあみき)

藺網編み機(いあみあみき)

藺網とは、藺草(いぐさ)で編んだ網のことで、カイコのフンや食べかすをとりのぞくときに使いました。
カイコがのった蚕箔の上に藺網を置き桑の葉をのせると、カイコは網のすき間をくぐりぬけて網の上で桑を食べるので、カイコをのせたまま網だけ持ち上げて別の蚕箔に移動させます。そして元の蚕箔にたまったフンや食べかすを掃除します。
写真は、藺網を編むための木枠(きわく)です。

整理番号:498 採集地:(東畑郷土資料館)
備考:「大正十二年一月新調」

編み機で藺網を編んだ状態

編み機で藺網を編んだ状態
福知山市教育委員会提供


麹蓋(こうじぶた)

麹蓋(こうじぶた)
本来、麹蓋は、酒を作るとき、蒸(む)した米に麹菌(こうじきん)をまぜて発酵(はっこう)させるために使う入れ物ですが、一般の家庭では、餅(もち)を入れる容器として使われました。
明治時代に精華町域で養蚕が開始されたとき、幼いカイコを麹蓋に入れて育てたという記録が残されています(『山田荘村誌』139頁。松田家文書「歓喜 勤労の部」)。当初は養蚕の道具が普及しておらず、ありあわせの道具を活用したのでしょう。
写真は江戸時代の麹蓋ですが、養蚕用ではなく、餅などを入れるために使われたものと思われます。

整理番号:1796-7 採集地:北稲八間
備考:側面墨書「安政六未年四月廿□」、側面焼印「[小に山印]」


練炭作り機(れんたんつくりき)
練炭作り機(れんたんつくりき)
練炭作り機(れんたんつくりき)
練炭作り機(れんたんつくりき)
カイコを育てるときは、部屋の温度を一定に保つ必要がありました。25度前後が適温とされ、春や秋など気温が上がらない時期には、練炭などを燃やしてカイコの部屋を暖めました。
写真は練炭を作る道具です。練炭は、石炭(せきたん)・コークス・木炭(もくたん)などの粉に粘着剤(ねんちゃくざい)をまぜ、押しかためて作ります。

整理番号:1737 採集地:祝園東


蔟折機(まぶしおりき)
蔟折機(まぶしおりき)
蔟折機(まぶしおりき)
カイコが成長すると、藁(わら)や紙などで作った蔟(まぶし・ぞく)という人工の巣にカイコを移し、繭(まゆ)を作らせました。カイコを蔟に移す作業を上蔟(じょうぞく)といいます。蔟は、時代を追うごとに改良が進み、さまざまなタイプが作られました。
写真は「島田まぶし」とか「折わらぞく」とよばれるタイプの蔟を作る道具で、上から藁を入れ、2本のハンドルを使って藁をジグザグに折り曲げました。

整理番号:1319 採集地:木津川市吐師
備考:焼印「特製品」「登録商標(馬2頭の絵)」、ラベル(破損大)「品□保証登録商標(馬2頭の絵)」「[  ]YAMA」

折わらぞく
折わらぞく
浅井歴史民俗資料館提供


毛羽取機(けばとりき)
毛羽取機(けばとりき)

毛羽取機(けばとりき)
繭(まゆ)の周りをおおう毛羽(細かい毛)をとりのぞくための道具です。
蔟(まぶし)からとり出した繭を毛羽取機の簀子(すのこ)の上にのせ、ハンドルを使って棒を回し、毛羽をからめとりました。

整理番号:1407 採集地:南稲八妻(川西小学校)
備考:焼印「報国式毛羽取器 登録商標 京都府 報国社特製」、墨書「大正拾四年六月新調 稲田村」「南稲」


コラム カイコを育てる 

コラム 相楽郡における養蚕の歴史

コラム データでみる山田荘村の養蚕 

コラム 養蚕家の帳簿