せいか舎コラム

まつりと食事道具

最後(さいご)に、精華町内(せいかちょうない)でおこなわれているまつりのうち、食事道具にまつわるユニークな風習(ふうしゅう)があるまつりを紹介(しょうかい)します。現代(げんだい)からみると一風(いっぷう)変(か)わった風習にみえるかもしれませんが、昔の村人の信仰心(しんこうしん)や世界観(せかいかん)を今に伝(つた)える貴重(きちょう)なならわしであると思われます。

祝園の居籠祭(ほうそののいごもりまつり)
~釜(かま)や鍋(なべ)を縄(わら)でくくる風習(ふうしゅう)~

毎年1月に祝園神社(ほうそのじんじゃ)でおこなわれるまつりで、初申(はつさる)の日〔1月に申が3回ある年は中の申の日〕から3日間おこなわれます。

第2日夜の「御田の儀(おんだのぎ)」では、燃(も)えさかる大松明(おおたいまつ)をかついで神社から「幸ノ森(こうのもり)」の神田(しんでん)へ向かいます。松明奉持者(ほうじしゃ)と宮司(ぐうじ)は模型(もけい)の農具を用いて農作業(のうさぎょう)の所作(しょさ)をおこない、今年の豊作(ほうさく)を祈願(きがん)します。

第3日の「綱曳の儀(つなひきのぎ)」では、青竹とわらで作った綱を二手に分かれ引き合います。

居籠祭は「音無(おとな)しの祭」ともいわれるように、かつてはまつりのあいだは一切の物音を慎(つつし)むことがきびしく守られていました。村人は物音を立てないようさまざまな工夫(くふう)をしました。食事の道具についても、釜や鍋のフタを縄でくくり、音を立てないようにしました。また、期間中は料理をせずに、前もって作りおきした精進料理(しょうじんりょうり)を食べました。

くわしくは
『精華町の史跡と民俗』祝園神社由緒沿革といごもり祭

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弓始式(ゆみはじめしき)
食器(しょっき)を使わずに食べる風習(ふうしゅう)

毎年1月10日、菱田(ひしだ)宮川原の春日神社(かすがじんじゃ)で、恵方(えほう)の的(まと)に向けて弓矢を射(い)る神事(しんじ)で、「ハリマト」ともよばれます。神事は宮座(みやざ)の人びとによって運営(うんえい)されています。

神事が終わったあと、宮座の人びとは神前(しんぜん)に供(そな)えた食材(しょくざい)を下げて、食事をしますが〔直会:なおらい〕、このとき、食べ物は器(うつわ)ではなく半紙(はんし)に取り分け、箸(はし)を用いず手でつかんで食べます。

くわしくは
『精華町の史跡と民俗』豊凶を神矢で占う弓始式

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